
絶対に怯んではならず、
一歩たりとも譲ってはならない。
「いけ浅羽いけっ、せめてそこでちゅーだっ、えぐり込むようにちゅ-だっ」
いやさあ、親戚の子だったんだ。去年の話だからあのとき小四でいま小五か。
年齢的にちょっとアレだろ?
昔からお兄ちゃんお兄ちゃんってなつかれてたしさ。
漢字の書き取りみたいなラブレターもらって、
買い物につき合って喫茶店でパフェ食って遊覧船乗って帰ってきた。
むこうはデートだデートだって大騒ぎだったけどさ、
それってどう思う?ひょっとして子守り?
誰かさんみたいに世の中の常識を電波で手術したいんじゃありませんっ!
テレビショッピングの健康器具みたいなもんだったんだよ」
「―――え、」
「ああいうものを買って身体をシェイプアップできる奴もそりゃあ中にはいるだろう。
だけどな、そんな奴は最初から、健康器具なんか買わなくたって
腕立て伏せやランニングでシェイプアップができる奴だったってことなんだ。それと一緒だよ。
UFOが攻めてきて一致団結できるくらいなら、
人類は、そんなもん攻めてこなくたってとっくの昔にダンケツしてたはずなんだよ」
そんな自分に対する誓いを、これまで何度となく破り続けてきた。しかし、今度こそは最後までやろうと思う。今度こそは口先だけの空威張りではなく、自分の言葉と決意に最後まで殉じよう。
覚悟を決めた。世界を滅ぼそう。
本当の悲劇とは、
誰かひとりを残して他の全員が死ぬことであり、
他の全員が助かったのに誰かひとりだけが死ぬことだ。
みんな、気づいていなかっただけ
水前寺の顔に壮絶な笑みが浮かぶ。
「おれの周りにはどうにも、女性陣のほうに優秀な人材が多いらしいな」
「例えばだ。その女の子にはひとりだけ友達がいたとするわな。その友達は、おじさんみたいなのと違って勇気も根性もある立派な奴で、女の子の窮状を見るに見かねてその子を連れて逃げたとするわ。軍隊を向こうに回しての大逃避行だ。例えばの話だが、もし仮に、そんな奴が本当にいたとしたら、」
「尊敬のひと言に尽きるね。世界遺産に指定したいね。おじさんなんかがまともに見たらまぶしくて目が潰れるね。そして及ばずながらも手助けができはしないかと思うね。おじさんみたいな奴にもいかっこしたいって気持ちがほんのちょっぴりくらいは残ってるしさ、オレはそんなにも立派な奴の殿を守ったんだぞって後で仲間に自慢できるしさ。この先どこかの橋の下で野垂れ死にするときにも、その時のことを思い出せば心安らかに死ねるかもしれない」
「きたあっ!中華丼が来たあっ!うわあーーーーっ!!」
最後の料理がやって来る。
信じ難いものが近づいてくる。
(――今まで、お守りなんて一度も欲しいと思ったことがなかった。)
いいか、裏山の秘密基地だぞ。謎の渦巻く園原基地をひと夏かけて監視すんだぞ。
近くの畑にスイカ盗みに行ったり盛ってるアベックの車に爆竹投げたり
野生のタヌキを餌付けしたりとイベントだって目白押しなんだぞ
だって仕方がない。いないんだから。すぐ放送で呼び出されて早退してしまうのだから。何か事情があってのことなのだろうが、そのことを話してくれるならともかく、だんまりを決め込んでいる奴の都合など斟酌してやる義理はない。ただでさえ友達もいないくせに、せっかくの学園祭をひとりぼっちで過ごすはめになっても自業自得だ。放っておけばいいのだ。こっちだって学園祭の準備でいろいろ忙しいのだ。余計なお節介を焼いている暇はないのだ。自分はこれから、どこがどんな企画をやるのかを浅羽と一緒に取材して回らなければならない。それを紹介記事にまとめる準備も浅羽と一緒にやっておかなくてはならないし、学園祭当日にはこれらの企画を実際に見て回らなくてはならないから、浅羽と一緒に焼きそばを食べたり浅羽と一緒に焼きいもを食べたり浅羽と一緒に映画を見たり浅羽と一緒にお化け屋敷に入ったりしなけらばならない。もし清美にからかわれたら、こう言ってやればいい。
だって仕方がない。そういう企画なんだから。
「おすすめのライトノベルは?」とネットで話題になるとほぼ確実に推薦される、ボーイ・ミーツ・ガール小説の超傑作。コミカルなセリフから胸が痛くなるセリフまで入り乱れています。ブログ管理人が大好きなセカイ系ラノベ。
『イリヤの空、UFOの夏』(イリヤのそら、ユーフォーのなつ)は、電撃文庫から刊行されている秋山瑞人のライトノベル。また、これを原作とするOVA・ラジオドラマ・ゲーム・漫画作品である。原作のイラストは駒都えーじ。
00年代の評論においては『最終兵器彼女』『ほしのこえ』とともに「セカイ系」作品の代表として扱われることが多い。他のセカイ系と呼ばれる作品と同様、1995年から放送されたTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の強い影響下において成立した作品でもある(浅羽=碇シンジ、イリヤ=綾波レイ、水前寺=加持リョウジ、榎本=碇ゲンドウ、という明確な登場人物配置の類似の他、正体不明の敵、目的の明かされない組織、舞台となる季節が夏であること、など)。ただし、物語の基本的なプロットは冲方丁が指摘するように古典的な「難病もの」であり、エヴァンゲリオンのように主題や作者の思想を深く掘り下げるような作品と言うよりは、「ライトノベルとしての表現」にこだわった作品であると言え、ひとつひとつの文章表現を高く評価する声が大きい。
『SFが読みたい!2004』国内ベストSF第8位。
2chライトノベル板大賞にて、2001下半期2位(2巻)、2002下半期1位(3巻)、2003下半期2位(4巻)。
羽直之は園原中学校の二年生。非公式のゲ,リラ新聞部に所属する彼は、部長である水前寺邦博と共に、夏休みの間中、裏山にてUFOを探す日々を送っていた。園原にはUFOの噂が絶えない有名な空軍基地があり、水前寺はその秘密を追究していたのだ。しかし夏休み全てを費やしても、UFOについては結局何の成果も得られなかった。
そして夏休み最後の夜、せめてもの思い出にと浅羽は学校のプールへと忍び込む。が、そこには伊里野加奈と名乗る、見慣れぬ不思議な少女がいた。状況が飲み込めないままに浅羽は伊里野と触れ合うが、すぐに伊里野の兄貴分と自称する謎の男が現れて、その夜はそれでお開きとなった。
そして翌日の始業式の日、浅羽のクラスに伊里野が転校生として編入してきた。ささいな事件がきっかけでクラスから孤立してしまった伊里野と、そんな伊里野のことが気にかかる浅羽と、伊里野の周囲に垣間見える幾つもの奇妙な謎。そんな風にして、浅羽直之のUFOの夏は、その終焉に向けて静かに動き出した。



コメント