日本の企業経営者 サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長
直近の11年間はローソンの営業利益が毎年伸びた。社会がデフレに苦しむ中、みんなと同じ行動をするのではなく、違うものをやろうとチャレンジしたことが大きかった。
「王」が天守閣にこもったままでは、その下にいる将軍たちが動くことはありません。
競争のないところでは、イノベーションは生まれません。ライバルをつくることが重要です。
規模で見た強者が勝つと決まっているなら、戦略も戦術も考える意味がないはずです。全面戦争を挑もうというのではなく、「どこで、どう戦うか」ということを突き詰めて考える。決まったらそこに資源を集中投下し、その局地戦では必ず勝つようにするのです。
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小売りのプロからすれば、素人が何アホなこと言っているんだとなりますが、素人だからできる発想もあります。小売りの流儀を守っていては「二番手」という枠から一歩も外に出られません。既存のルールでは、トップには戦いを挑めません。
私はよく「経営はサイエンスだが、アートでもある」と言っています。ロジカルな思考は当然重要なのですが、最終的な判断を決めるのは知見に基づく直感なのです。
コンビニは「時間を買う店」だといわれてきました。最も伸長したのは、日本経済がバブルに向かっていく時期でした。つまり、日本人の多くが超多忙だった時代です。時間を省ける便利さで評価を集めたコンビニは、その後も、画一的で効率的な経営に力を入れてきました。現在でも競合企業の多くは、これまでの方向性を維持しようと考えているようです。しかし、効率を考えるだけでは挑戦は生まれません。どこかで行き詰ってしまいます。
優れた経営者は直観力に長けていると感じます。そうした感性やひらめきは、社内では生まれづらい。社外の人に会い、四方八方から刺激を受けて、頭を忙しく回転させなければ磨かれないのです。
コンビニの中心顧客は、長らく働き盛りの男性でした。忙しい彼らのために、すぐ食べられる高カロリーな商品が中心になっていました。しかし、高齢化を背景に忙しくない人が増えつつあります。また、どの世代でも一人暮らしが増え、個食化が進んでいます。ナチュラルローソンでは、都市部の女性に向け、美と健康にこだわった商品を多く展開しています。また、小分け野菜などを置いた生鮮コンビニのローソンストア100も始めました。
いま普通のコンビニに行って面白いですか。ぜんぜん面白くないですよ。だってお客さんが飽きてますから。もう、便利さだけじゃ通用しない。数字がそれを証明しています。既存店の売り上げはもう10年近く伸びていない。結論として、コンビニはいまのままでは絶対に駄目だということです。
経営者の仕事とは、人を動かすこと、人をして何かを興すことです。その判断は、ロジックよりも、「この人についていこう」という動物的な感覚に左右されます。だからダイレクトな言葉の力がとても重要になる。そして、それは諸刃の剣です。勢いや決意と一緒に、迷いや弱気も伝わってしまう。私は二義的な表現は避け、迷わずに言い切ることを心がけています。そのため、常に考えて、考えて、考えている。自分を追い込んでいる。そこまでやって初めて、言葉に魂がこもるのです。
店舗数で業界1位であるセブンイレブンはとても強い。それは私が一番わかっています。だから競合相手の真似をするだけでは、いつまでも勝てません。
人間は臆病な動物です。頭では耐え抜いてやらなければとわかっていても、負けると思うと動けない。どれだけ言葉を尽くして論理を説いても、リーダー自身がリスクを取って行動しなければ、部下は動きません。感情を奮い立たせる姿勢を見せなくてはいけないのです。
私が社長になる前まで、ローソンでは他と比べあまり特徴のない100円前後のおにぎりを販売していました。現場の人間は、他社よりおいしい商品は作れないと、最初から諦めていた。私は「厳」で臨みました。これまでの担当者をすべて外したうえで、新たに全社横断のプロジェクトを立ち上げました。「負け癖」のついた現場を、会社変革の主戦場に変えたのです。米、塩、海苔はすべて変更。具材も一新。2002年2月に売り出した第一弾「焼さけハラミ」では、フレークではなく大き強切り身の鮭を使いました。価格は160円。こうしてスタートした統一ブランド「おにぎり屋」は好評を博し、基幹商品になりました。
農家の皆さんが自分たちの価値に気づいていないところはありますね。ローソンは出資する農業生産法人の運営で、農家の皆さんとのお付き合いが増えました。そのなかで、うちの社員が地元の浅漬けを食べさせてもらう機会があった。これがびっくりするほど美味しいんです。担当者が「どうしてこんなに美味しいものを売らないんですか?」と聞くと、「こんなもん、売れるわけないでしょ」という答えが返ってきたそうです。いまでは「胡瓜と白菜の浅漬」という人気商品です。
昨年、当社(ローソン)が「健康」を新しいキャッチフレーズとして打ち出したのは、幅広い層の人に関係する事柄だからです。女性はこれからもっと働く。料理に時間が割けない人に、どうやって簡便で安心な食材、調理済みの食品を提供するか。アレルギーなどを持つ子供に向けて、いかにミネラルが豊富な野菜を提供するか。もっと考えなくてはいけません。
現在のローソンは健全な議論が生まれない固い土のようなもの。よく耕された土が無ければ、よい作物(商品)は育たない。私の最初の仕事はこの土に鍬(くわ)を入れること。
「コンビニはこういうもの」という既成概念と戦い、アメーバのように常に様々なものを取り込んで変わっていく必要があります。
ブログ管理人のコメント
経営や商品開発はリスクと隣り合わせの投資的行為です。リスクから逃げずに厳しい現実と立ち向かう姿勢が成功には不可欠なのだと教えてくれる金言ばかりです。
経営や商品開発はリスクと隣り合わせの投資的行為です。リスクから逃げずに厳しい現実と立ち向かう姿勢が成功には不可欠なのだと教えてくれる金言ばかりです。
新浪 剛史(にいなみ たけし、1959年(昭和34年)1月30日 – )は、日本の企業経営者。サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長、元株式会社ローソン取締役社長及び会長(3ヶ月のみ)。
81年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、同年4月、三菱商事株式会社に入社。91年、ハーバード大学経営大学院を修了し、MBA(経営学修士)を取得する。99年、三菱商事生活産業流通企画部外食事業チームリーダーに就任。2000年、同社のローソンプロジェクト統括室長となる。
02年、株式会社ローソン顧問に就任。同年、同社代表取締役社長執行役員となる。05年、代表取締役社長CEOに就任。14年5月、同社取締役会長に退いた。14年7月1日に行われるサントリーホールディングス株式会社の臨時取締役会にて、同氏はサントリーの社長に起用され、10月1日付で就任する見込みとなっている。サントリーにおいて、創業家以外からの経営トップ就任は初。
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