崩月流甲一種第二級戦鬼、紅真九郎。紅の名言1
「いるに決まってんじゃない。いるからこそ、まだ『この程度』なのよ。かろうじて世界は成り立ってる。神様がいなかったら、こんなもんじゃ済まないわ」
「今回は善行さ。わたしにしては、珍しくな」
「えっ?」
「日本語がわからんのか。わかるなら答えろ。おまえの名は?」
「……紅真九郎」
「覚えよう。それで、わたしの部屋はどこだ? すぐに案内しろ」
「ここだけど」
「なに? じゃあ寝室は?」
「ここだけど」
「食堂は?」
「ここだけど」
「リビングは?」
「ここだけど」
「風呂は?」
「ない。でも、近くに銭湯があるから……」
「……ふん、そうかそうか。わかったぞ、そういうことか。おまえ、わたしが子供だと思ってバカにしてるな? こんな貧相な部屋に人間が住めるわけなかろう!」
「いや、わたしは悪女さ」
「悪女?」
「男を手玉に取り、金を貢がせて優雅に生きる、女として最上級の存在だよ」
「正気とは何か、正常とは何か、それを考え続ける意志のことよ」
「いや、見たことない。……新聞やテレビでも、見た記憶がないような気がするな」
「どうしてかわかる?」
「いや」
「本当の権力者ってのは、決して表には出ないからよ」
質問。この国で一番偉い人は誰ですか?
答え。総理大臣。
そんなことを本気で信じているのは、小学生くらいだろう。
では本当に偉い人は誰か?
答えは「わからない」だ。誰だかわからない。どこのどんな奴だかわからない。だからこそ力を持ち、偉いのだ。本当に力があり、偉い存在は、詳しいことはみんなに知られない。それは、天から下界を見守っているという神様と同じ。
まさに雲の上の存在ってわけか……。
嫌なことから逃げても、それが消えて無くなるわけではない。だから、受けて立つ
「ダメ」
「なぜだ?」
「子供の見るものじゃない」
「……エ,ッチなことなのか?」
「全然違うよ! いいから、おまえは向こうでおとなしく待ってろ!」
【歪空《ゆがみそら》】【堕花《おちばな》】【斬島《きりしま》】【円堂《えんどう》】【崩月】【虚村《うつろむら》】【豪我《ごうが》】【師水《しみず》】【戒園《かいえん》】【御巫《みかなぎ》】【病葉《わくらば》】【亜城】《あじょう》【星噛《ほしがみ》》。今ではその半数近くが廃業、あるいは断絶しているが、その勇名・悪名・凶名は未だに裏世界で影響力を残しているという。
「……恋人?」
夕乃の視線は真九郎に向かったが、真九郎はブンブンと首を横に振った。
深く考えなくていいよ夕乃さん。子供の言うことだから。
真九郎はそういうメッセージを送ったつもりだったが、その努力を紫が破壊する。
「真九郎は、夕乃のものではない。それを知って、わたしは安心したぞ」
真九郎にピタリと身を寄せる紫。
紫ちゃん、女の子がはしたないですよ。殿方とは適度な距離を取るもので……」
紫は、あっかんベーと舌を出し、真九郎の腕を嬉しそうに抱きしめた。
それでも夕乃は笑顔で注意。
「離れなさい、紫ちゃん」
「嫌だ」
「紫ちゃん」
「嫌だ」
「……真九郎さん」
「えっ、俺?」
こっちに矛先が向いた。
いつかあなたも大切なものを見つけたら、キスをしてあげなさい。
それは、母が娘に贈った言葉。
この世の真理。
「わたしは、見つけた」
紫は、真九郎の頭を自分の胸へと引き寄せ、小さな手で抱きしめる。
まるで、母親が赤子を抱きしめるように。
「満足って……」
「詳しくは知らんが、男は女の胸をどうかして楽しむのだろ?」
「あー、それは……」
「そのためには胸が大きい方が良い、とも聞いた」
「んー、それは……」
紅香が言うには、奥ノ院で暮らす女たちは誰一人として疑問を持たないらしい。一族のために子供を産むことだけが自分たちの存在意義であり、それ以外の望みを持たないのだ。正妻への嫉妬も、産まれた男子を取り上げられる悲しみも、世間への憧れもない。それは、そういうふうに教育されるからだ。奥ノ院は、女たちにそう教育する。必要なら薬を使い、それでもダメなら脳にメスを入れてでも、必ずそうする。奥ノ院というシステムに順応するように、女たちを改変する。だから奥ノ院には、俗世間のような争いも犯罪もない。ただひたすらに穏やかに過ごし、子供を産み、やがて死ぬ場所。
人生には無数の選択肢がある。が、正しい選択肢なんてもんはない。選んだ後で、それを正しいものにしていくんだ
「崩月流甲一種第二級戦鬼、紅真九郎」
真九郎にとって初めての名乗り上げ。死んでも退かない意思表示。
わたしたちは、相思相愛だ!」
「カッコイイではないか」
「カッコイイって……」
「わたしの相手となる男なら、角くらいあってもおかしくはない」
夢を実現できるのは、ほんの一握りの者だけ。運と実力に恵まれた者だけ。紅さんも、それに含まれます。
女はな、生まれながらにして女だ。しかし男は、努力しなけりゃ男になれねえ。真九郎、おめえは男になった。女のために命張れるようになったら、もう一人前よ
「そんな感じかな」
「わたしと真九郎さんで、夫婦役をやるわけですね?」
「うん、まあ」
「それは素晴らしいアイデアです!」
目を開くと同時にグッと拳を握り、夕乃は満面の笑みを浮かべる。
「ぜひ、ぜひやりましょう! 将来の予行練習にもなりますし!」
「将来?」
「それに、これは紫ちゃんへの良い牽制《けんせい》にもなります!」
「牽制?」
「ああでも、周りの人から『奥さん』て呼ぼれたら、どうしましょう……」
「……恥ずかしいこと、堂々と言わないでください」
「恥ずかしい?」
闇絵は、不思議そうに首を傾げる。
「働かずに暮らす。それは、人類共通の夢じゃないか」
「それは、まあ……」
一つでいいから、何か答えを見つけておくといい。それさえあれば、たいていのことは乗り越えられる
名前は志具原理津、歳は十七、八ってところかな。何処の誰がこの子を殺したいのかは、知らねえよ。どんな一方的で、理不尽で、胸ク,ソ悪い理由があるのか、それは知らねえよ。可哀相だろうな。哀れだろうな。酷い話だな。でも……
それ、どーでもいいんじゃねえの?
どーでもいいね。オレは、全然興味ねえよ
そうだよ。オレに謝れよ。悪いことしたんだから、謝れよ。オレ、帰国したばっかだからさ、だるいし、眠いんだよ。このくだらねえ打ち合わせがなかったら、ゆっくりぐっすり寝てるとこなんだよ。あんたのせいで、早起きしてこんなとこに来てんだよ。だから土下座だ!
「今のは忍法『行ったふり』です」
「忍法?」
「女というものは、生まれながらに忍法や魔法が使えるんです」
刀の柄を握り締め、二本の鞘をカチカチと当て鳴らすリン・チェンシン。表情は変わらないが、それは彼女なりの感情表現のように見えた。
「【斬島】で、しかも『切彦』を名乗るなら、紛れもなく本家の直系だろう。現代の切彦がどの程度の者か、会うのが楽しみだ」
「現代って?」
リン・チェンシンの話によると、【斬島】では、代々殺し屋稼業を継いだ者が『切彦』を名乗るらしい。たいていは男だが、稀《に女が名乗る場合もあるとか。
君の八年間は、幸せだった?
わたし、寒いとか暑いとかいう感覚、もうないのよ、かなり前から
お父様とお母様は、命がけで愛を示してくれた。でもわたしは、二人の娘であるわたしは、自分のことしか考えなかった。それが、わたしの本性。志具原理津は、そういう人間だった
わたしだって、お父様とお母様を愛していたわ。本当に、愛していたのよ。でもそれは、そんなのは、表面的で、まやかしで、ウソで、わたしはただの身勝手な人間だった。最低の人間だった
「【斬島】第六十六代目切彦!」
……最後に、頼みが、あるの……
いつか、もしも、犯人を見つけたら、ク.ソッたれな犯人を見つけたら、ぶっ飛ぽしてやってね、わたしの分も……
ゆーあーないすがい
「あんた……」
「そりゃあもちろん、犠牲は少ないに越したことはありません。でも、まあ、我が社としては、依頼の遂行が最優先ですから。それに伴う犠牲の大小には、あまり関心ありませんねえ」
「わたしと一緒にな」
あなた、才能ありますよ! 我が社に来れば、立派な『人でなし』に育ててあげます!
いわゆる、愛の話というやつだ。
『紅』(くれない)は、片山憲太郎による日本のライトノベル。イラストは山本ヤマトが担当している。集英社スーパーダッシュ文庫刊。同作者の『電波的な彼女』と社会背景や登場人物がクロスオーバーした、アナザーストーリーに位置付けられている。2009年3月時点において、シリーズ累計100万部を突破している。
原作は2005年12月20日から刊行が開始されている。
また、原作イラストを担当する山本ヤマトにより漫画化された。漫画版『紅 kure-nai』は2007年8月に『赤マルジャンプ』にて予告編が掲載されたのち、2007年11月に創刊された『ジャンプスクエア』創刊号より連載されている。話数カウントは「第○話」。漫画版のストーリーは2巻と3巻は小説版と同じだが、1巻及び4巻以降においては、基本的な設定は原作の小説と同じであるものの、『ギロチン』編のストーリーが大幅に変更されているなどオリジナル的な要素が強い。
2014年12月19日には、およそ6年ぶりとなる新刊『紅〜歪空の姫〜』をダッシュエックス文庫から刊行すると共に、過去の3巻も新装版として同レーベルより刊行された。
五月雨荘に住む駆け出しの揉め事処理屋・紅真九郎の元へ、恩人であり尊敬する大先輩・柔沢紅香が1人の少女を連れて来た。世界屈指の大財閥の御令嬢、九鳳院紫の護衛を依頼したいと言う。世間知らずだが好奇心旺盛な紫との共同生活に慣れた頃、彼女を狙う人物が2人を襲う。依頼の裏に隠された彼女の真相を知ったとき、真九郎が選んだ行動は……。
登場人物達の魅力の平均値が異常に高い、キャラ系小説の最高峰。名乗り上げの名言はテンションが上がります。ブログ管理人は口八丁で真九郎を悪の道へ引きずり込もうとする外道の一人のルーシー・メイが好き。